Blog

忘れない

2022.12.14

大坪さんの空は

いつも建物の間から見える空ばかり

 

ナポリから帰国後そう言われて見返したら

どの写真の空も見上げた建物から覗く青空

 

ナポリじゃ海沿か高台に行かなきゃ

コバルトブルーの海も、広い空も、カプリ島も見えない

街中の暗がりから見上げる空は

何時だって器用に切り取られてる

 

有ると無いが溢れてる街

教会の中にいるように、母親の胎内にいるように

有限の中で無限を思う時

この街では誰も死なない

ピーノダニエレも

エドゥアルドも

トトも

 

「人が死ぬのは忘れられたときなんだ

忘れさえしなきゃ、肉体がどっかに行くだけ」

 

“忘れない”

街中の祠にマリア様と一緒に貼られた無数の写真

お母さん、お父さん、ジャンニ、アンナ、飼い犬の写真も

小さい共同体で

カルティエーレで

街で

故人の魂は、想う人の心の中で生きている

“忘れない”

 

久し振りのVia Giustiano

モンテサントの市場を抜けてクマーナ線で1駅

PIAVEで降りたら改札を抜けて右折

50メートルも歩けば大きなショーケースが見えてくるよ

“PIZZERIA E ROSTICCERIA

PIZZE e PIZZE”

歳78の師匠ジェンナーロは相変わらず昨日会ったかのように

迎えてくれる「何年ぶりだっけヨシ?」って聞きながら(笑)

次男のリーノ、孫のジェンナーロ(大体孫はお祖父ちゃんの名前)、奥さんのカルメッラ、圧倒的に持続可能な家族経営❗

挨拶もそこそこに腹減ってるだろって

グラッファ(ナポリ風のジャガイモをいれたドーナッツね)をすすめてくる、

 

師匠:ウマイか?ヨシ

►ウマイよ、変わらないね

師:変えとらんからな~

►これからもね

師:レシピ教えたっけ?

►あなたのレシピで作ってるよ

師:そか、皆喜ぶやろ

►食べたことないって言われる

師:せやろ(どや顔)

 

行く度ににこのやり取りをする

新喜劇のようなお決まりの挨拶

これもひとつの“忘れない”なんだ

 

下町フォルチェッラを歩けばそこかしこに

彼がいる

Diego Armando Maradona

「マラドーナは60歳で亡くなったが、120年分生きたって言って良いほど刺激的な人生だった」ある人が言うけど

この街じゃ永遠を生きてる

~✴️ブルボン朝ナポリ王国の絢爛たる文化は統一後の北による徹底的な収奪によって衰退した。ナポリ王国の菓子·料理技法や服飾技術は他州また他国に継承され「イタリア」文化の要となって生きつ続けたが、土地から離れることができないワインは王国と運命をともにするしかなかった~「ワイナート33号」より抜粋

 

地場品種であるアリアニコとフィアーノで北からカンパーニャの尊厳を取り戻したワイナリーあのマストロベラルディーノの様に

ディエゴはサッカーボール1つでナポリにナポリ人であることの尊厳を取り戻し、その地域性を守ってきた。30年以上優勝してないリーグ戦だけど、良いじゃない。

だって語り継ぐべき

“忘れない”があるのだから

今日もディエゴの魂は想い人のなかを漂って

ナポリの空を覆ってる

だから皆、俯く代わりに切り取られた空を見上げる

 

出発の前にジェンナーロに挨拶

 

師匠:次は何時来るんや?

►来年かな、クリスマスには電話するよ

師:揚げピッツァの生地はどうしてる?

►教えてもらったようにやってるよ

師:そか、皆喜ぶやろ?

►ああ、凄くね(笑)

何度も同じやりとり

心地よい言葉のキャッチボール

 

別れ際、いつもふざけてるリーノが

真面目な顔して目を見て言ってくれたんだ

 

YOSHI

Non dimenticare!

Noi ti vogliamo bene,

perche,sei bravo persona.

 

ヨシ

忘れないでくれ、

どうして俺たちがお前を大切だと思っているか

だってお前は

いい奴だからさ

 

“忘れない”さ

 

 

 

おおつぼ