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午前4時のコルネット、11周年

2021.08.05

深夜零時のvia giustiniano a Napoli

後片付けしてる

油、小麦粉、吸殻とシンク一杯の洗い物

客達のお喋りの残り香

「Yoshi ,oggi e Sabato」

アンジェラ

そう今夜は土曜日だもの

 

仕事の後の賄いだって

土曜日の夜はピッツァって決まってる

今夜は500枚も600枚も焼いたミンモの薪窯に薪は要らない

ジーノが言う

「fino e bencotta」薄~く良く焼きで😉✨

ナポリピッツァはモチモチが美味いって日本だけ(笑)

美味しいピッツァのおまじない fino e bencotta

小麦粉を食べる歴史と文化がある国はしっかり焼くの

「美味いだろ」とリーノ

深夜のピッツァをペローニで流し込んで

さあ出かけよう

 

いつもの輩、朝も昼も夜も

明日も、多分明後日も

ジーノ、リーノ、

その友達のマッシモが二人と

アンドレアにパオロ

彼女も家族もうっちゃって、今夜は朝まで遊ぶ

15時間働いてから遊ぶ(笑)

店の前にフォードとフィアット

乗り込んで夜の街へ

ナポリからバニョーリ、海沿いを男達が行く

お喋りなナポリ人、車内にあふれるお喋り

でも誰も他人のお喋りは聞いてない

聞いてるふりして自分の話

この街に聞き上手なんているんだろうか

キリストは黙してあなたの話をきいてくれる

カトリックの国

だから教会は必要

マッシモが車内で屁こいた(笑)いつものこと

「Madonna mia aria !」空気をくれ~

ア~リア~

30過ぎの男共が車から身を乗り出して

Aria! Aria !Aria!の大合唱

土曜日の夜

 

深夜2時

海沿いのバール

着飾ったカップル

モトリーノに乗った若い男女のグループの中で

30過ぎのオッサングループは異様

ジーノの馴染らしく、バリスタは愛想が良い

何をするかって?

ドルチェを食べるんだ

皆で真剣にショーケースを眺める、

ジェラートにアラゴスタ、

ババにカンノーリ

ジーノはエクレアがおすすめだと言う

さっきまでフライヤーの前で揚げ物してたのに

海を見ながらエクレア食べてエスプレッソ飲んでる

ナポリでは日常が劇的だって思う、

街っていう舞台装置があって

人は皆自由にお喋りして、

それぞれの小さな幸せを大袈裟に表現する

ヴェスヴィオのせいかしら

ポンペイの昔から世界は一瞬で灰になるって知ってるから

 

帰り道、リーノが朝飯を買うと言う

暗がりの中、オレンジ色の街灯に照らされた倉庫みたいな建物

パスタスフォリアとブリオッシュの焼ける匂い

職人がコルネットを焼いていた

「クレマかチョコラートか?」

「チョコラート….」

熱々のコルネット

まだ油脂が冷えてないからフワフワしてる

一口齧れば、チョコの洪水、最高

皆、口と手をベタベタにしながら

午前4時のコルネット

明日の朝飯だとジーノがお土産を買ってくれた

クレマとチョコラート

職人の手仕事の素晴らしさよ

20年も前の話

何でもない話

 

 

2010年の8月4日に生まれたタンブレッロ

コロナ渦の中、静かに11年を迎えました

仕事終わりに海辺でエクレア食べないし

朝帰りとかもうしない

今、人生は劇的でもロマンチックでもないけど

まだ旅人でいれてる思います

だって世の中は知らない人と

知らないことだらけなのだから

 

お陰さまで自分が出来ること、出来ないこと

やりたいこと、やりたくないこと

そして天から与えられた使命みたいなもんも

このコロナ渦で感じることができました

自分の出来るこの手作業を徹底的にやり通して

未だ知らない世界にコミットしていく

未だ知らない人との出会いもそこにはあるのでしょう

それを僕は旅と呼ぶことにするんだ

19歳でシベリア鉄道に乗った

今、僕の旅には

家族がいて、スタッフがいて、大切な仲間がいる

コルネットから溢れてくる

チョコレートみたいに

幸せと感動が溢れてくる人生を

みんなと

これからもね

 

 

YOSHIHISA  OTSUBO