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Si sente la pizza 信頼という絆

2021.10.25

Via gino doria 81 Napoli

La spaghettata

 

また電話がなる

アドルフォは朝から喋りっぱなしで

サルバトーレは愚痴りっぱなし

「Questo sabato?今週の土曜かい?構わないよ日本人で良ければ」

アドルフォ今度はどこに行けば良いんだい

 

師匠は当時ナポリピッツァ職人協会の副会長だった

毎日色んなとこから相談が舞い込んできてた

どこかのピッツェリアで?職人がいないってなるとペペかアウレリオが派遣されてた

二人が駄目ってなあると

ジャポネーゼの出番

日本人でも良いってとこはホテルやレストラン併設の職人の顔が見えないピッツェリアが多かった。。ほら東洋人が焼いてるって、ナポリ人は嫌がるからね

「あんたイタリア人が握る寿司は好きかい?」

 

こんな経験はなかなかあ出来ないよ

だってね

当日指定されたとこ行くじゃん

市内だったり、ナポリ近郊だったり

前情報無し、いっさいがっさいアバウト(笑)

その日の生地はあったり、無かったり

食材もあったりなかったり

上手くいく日もあれば

そうでない日も

正に対応力勝負

 

先ずは

冷蔵庫空けるとこから始める(笑)

家庭の主婦状態

そっから店と話して段取り決めて

進めてく

人や職人の面白さって、どんだけイレギュラーを拾ってこれたかだと思うの

そんな経験の礎があると、世の中はワクワクで溢れてくるでしょ

自信がないと世界は恐怖で溢れてくる

自信があれば世界は毎日不思議発見

でも過信がある人の世界は小さい

 

コロナ渦で内へ内へと向かう意識は

僕の内なる世界や記憶の断片を取り戻してくれました

忘れかけてた大切なこと

イレギュラーな世界でワクワクを感じること

ドキドキすること

知らない場所に旅するってこと

 

派遣されたホテルの従業員が厨房に入ってくる

「Nakata!今夜のピッツァは最高だって皆言ってる」

当時、日本人は皆Nakataと呼ばれた

疑念が信頼に変わると

ナポリ人は徹底的に信用してくれる

カメチエーレが言う

「mi raccomando una pizza per me!

後でピッツァを一枚宜しく」

こうなると店が歌い出す

客の笑顔とおしゃべり

カメリエーレの怒号とジョーク

キッチンの熱、焼き上がるピッツァ

ニンニクとバジリコの香り

お客様とお店、スタッフ間に信頼が産まれた時

愛に包まれて店が嬉しそうに歌い出す

それを僕は幸せと呼ぶ

こういう経験をするとね

レストランの仕事は辞めれなくなるんだ

辛いこと

泣きたい夜の方が多いけど

ナポリでこの歌を聞いてから

僕はずっとここにいる

 

僕のピッツァを食べたカメリエーレが言ったんだ

「Yoshi,si sente la pizza

ヨシ、ピッツァを感じるぜ」

最高の誉め言葉だろ

 

自信は経験からしか作られない

過信は無知からしか生まれない

不安はあんたが未経験なだけ

 

これからの時代

胸はって生きたいんだ

多少の自信も50年でついたし

ワクワクはあの時のまま

知らない明日はいつだって未知なる冒険

だから

今日も精一杯生きようって思う

 

アドルフォが電話に出る

「ヨシ、この前のホテルがまた来てくれって言ってる

Hai messo supumante dint’a pasta?

生地にスプマンテでもいれたのかい?」

 

こうして信頼“Fiducia゛の絆が出来上がるんだ

 

僕はこれからの時代も

タンブレッロが奏でる歌を聴いていたい

 

YOSHIHISA  OTSUBO